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桜の花の浮かぶ水槽で

鯖も泳いでます

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問いかけ


メタメタ世界視点を交えてお茶会後半の意味を考えてみました。






決意は固かった。
ただそれ以上に、運命の壁は頑強だった。

理御は、1986年10月6日の現実という壁に弾かれた。
それは言わば、役目を終えた駒が駒置き場――忘却の世界――へ送り返されるということ。

理御はそれを知らなかった。
自分が駒だという自覚さえしていなかった。
だからきっと、プレイヤーの指から離れるまで享受出来ないのだ。

それが幸運だったのだろう。
理御は、襟元を引っ張られるようにして引き上げられ、漆黒の誘いから免れた。

「あなたが落としたのは、夢に溢れた空ですか? 祝福された箱庭ですか?」

その問いは、まるで、童話に出てくる湖の女神様のよう。
視認は出来なかったが、問いの主のしとやかな声は、そのイメージをより確固なものにさせていた。



湖の女神ならばまずこう問うだろう。

“貴方が落としたのは金の斧ですか? 銀の斧ですか”

男は答える。

“どちらも違う。自分が落としたのは何の変哲もない鉄の斧だ”

その答えに感心した女神は、金、銀、鉄の全ての斧を男に与える。

――そういう話。


尤も、理御の性格では例えそんな状況でも

“ありがとうございます。でも私の斧はこれだけですから。お気持ちだけ受け取っておきます”

と当たり前のように答えるのだろう。
現に、今、こんな問い掛けを受けて、そのどちらも受け取る気はなかったのだから。

……自分が落としたのは、真実を知って、例え苦しい日々が待とうとも、ベアトの代わりに「幸福になるために生きる」日々。
どんなに恵まれていようと、他人から与えられるものならば空も箱庭も価値が無いのだ。

だから、理御は答えるつもりでいた。

“私はただ、先へ進みたいだけです”

と。

「あなたの願いは叶いません。何故ならあなたは存在しないから」

女神?は、凛とした声音で言い放つ。
理御はしばし瞠目し、次いで声を荒げた。

「どうして、そんなことを言うのですか……! 私は、今、ここに、ちゃんといます!」
「そうですね。あなたは、今、ここに存在しています。しかし、理御という駒は猫箱の中だけのもの。この先の未来にあなたは存在しないのです。この猫箱は、19年以上遡り広げることは出来ても“10月6日より先には広がらない”のだから」

猫箱……という単語に当惑する。
ベアトの物語を巡ったときに幾度か出た単語だ。
そういえばウィルとベルンも使っていたかもしれない。
……もしかしたら、彼女が初めに問うた『箱庭』はそれと同じ意味なのだろうか。

「現実では、10月4日から10月6日の間に六軒島に何等かの災害が起こったということしかわかりません。それが人災か天災かすら、わからない。だから数多の可能性が存在出来て、無限の魔法で満たされるのです」

声の主は変わらず淑やかな物言いで言葉を連ねた。

「そしてあなたは、“もしかしたら有り得たかも知れない”可能性の存在。その可能性とは、『10月6日に悲劇が発覚する』という前提があってはじめて夢想される。……つまり、惨劇の起こらない可能性は存在し得ない。惨劇が起こるカケラだからこそ存在出来る。あなたのカケラであなたが生き残れないのは、はじめから決まっていたことだったのです」

彼女が赤ではなく青で語ったのは恐らく慈悲だったのだろう。
理御にも、彼女の言葉に悪意が無いことは理解できていた。

「ふふふ、いけませんよ? 青で突き付けられた“真実”は相対するあなたの“真実”で対抗しなくては。それが出来ないのなら、あなたに生還は不可能です」

声の主は少し悪戯っぽく、けれど切なげに、真摯に、笑い、語る。

ああそうか、と理御は心の中で頷いた。
これは試練なのだ。きっと。
この問いに答えなくては、先程見た闇の奥底へ放り投げられてしまう。
――魔女の希望になるこっなど、夢のまた夢。

「難しいですか? では箱庭を大きくする術を、私が一つ提示いたしましょう。勿論、この方法を望んでも構いません」

最後の一文だけ、穏やかな彼女の声が、やけに冷たく強張った気がした。
それだけの重みのある話なのだろうと、理御は殊更耳を傾ける。

「10月6日、川畑船長が六軒島へ船を送ってから、事件が外へ流布されるまでの間に、新島及び新島行きの小型飛行機の飛行場周辺の一定区間――なるべく広く――を爆破、或いはそれに相当する被害を及ぼすであろう事故・天災を発生させます。小規模なものではいけません、六軒島と同じ状況を作るのです」

――爆破?

想像を絶する話に耳を疑う。
確か、今は自分が生き延びるにはどうするのか、という話をしていたはず。
――なのに、被害を増やす?

理御の持つ常識とは大きく掛け離れた提案。
それ以上に、自分の未来はそこまでしないと手に入らないものだということに、凍り付く。
恐らく、あまりに非現実的で、現実問題に思考を向けるのが恐ろしいのだ。

「孤島である六軒島とは違い、本州は交通手段が限定されません。また、規模が大きくなれば一人一人丁寧な生存確認など手が回りません。周囲の確認も裏も取れません。だから、右代宮理御という人間が生き延びている可能性を誰も否定出来ないのです」

それは、本当の意味で大きな、シュレティンガーの猫箱。
ベルンが見せた過去に遡るそれとは比べものにならないほど無限に近く、そしてなんて残酷な魔法なのか。

「尤も、そこまでしても生き延びる『理御』はあなたではありません」
「え……?」
「一般市民ならばいざ知れず、あなたは大富豪右代宮家の次期当主。それゆえに、猫箱の外の人間が『右代宮家の次期当主は理御ではない、そんな人間知らない』と証言する可能性が非常に高いです。ですから、存在出来る『理御』は『金蔵の子であり孫であり、かつ次期当主ではない理御』になってしまう。それはもはやあなたではない。そして、ベアトでもない。ただの、『理御』。……尤も、世界規模で決行するなら別ですが」

――世界規模デ決行スルナラ別デスガ。

何ということを言い出すのだろうと、絶句したまま肩を震わせる。
声の主は、優しく窘めるように続けた。

「わかりますか? あなたが生存する可能性はベアトよりも遥かに低い。それなのに、ベアトにとってあなたは希望。その意味が、わかりますか?」
「わからない……全く、わかりません!」

ただでさえ、コマだのネコハコだのカノウセイだの、そんな自己を否定するような話を理解することは容易ではない。
果たして物語の登場人物が、自分の世界は現実ではないと認めるだろうか。

それなのに、合わせて突き付けられた命題は金属のように重い。鋭い。
だから何もわからない――

「ならば考えなさい。時間は有限ですが、あなたが結論を出すまでは私が持たせます。うふふ、あの子に称号を譲ったことをこんな形で後悔することになろうとは……」
「あなたは、何者なんですか?」
「私は案内人。あなたを見守り導く案内人。知り合いの悪魔には、過保護な親のようだと言われますけれど」

案内人と名乗る彼女が、苦笑する。
悪魔と知り合いなのだとさらりと言うので驚いたが、きっとこの人も悪魔か魔女なのだろう。
きっと、ベアトリーチェを誰よりもよく知る魔女。
そんな気がした。

「どんな答えを出そうとも。あなたが至る山頂に、ベアトリーチェはいません。あなたとベアトは互いを否定し合う存在なのだから。残念ですね、一緒にお茶でも出来たなら、本当に楽しかったでしょうに……」






「さぁさ、答えは出ましたか?」

長い……否、永い沈黙の後、魔女の方がそう切り出す。
理御は声のする辺りへ向き直ると、はっきりと頷く。
有限の魔女が、ふっと微笑んだように感じた。

「あなたが落としたのは、片羽を棄てて掴む無慈悲な空ですか? 人間達の盲目に甘える鎖された箱庭ですか?」


End


――――


October.5.2010


ほぼ死亡エンドの回避ってどうやるんだろう……みたいな壁にぶち当たりまして。
お師匠様と対話したら少し思考が進んだ気がします、気「だけ」はw
理御が希望である理由は自分なりの答えを見つけましたが、まだ未来へ進む方法は全然…(汗
ただ、

理御が救われたらベアトも救われるなんて全く考えてませんよ。
どっちも助けられたらそれで良いじゃないですか。


(しかも私、理御≠ベアト説支持者ですのでw)(追記:=もp≠もどちらも考えを進めることに致しました)

寧ろEP7のお茶会前半の演劇? なんて、生死不確定者は
戦人、真里亞、熊沢、源次、嘉音、紗音
……と、見事にベアト様が黄金郷へ招きたかった、且つベアト様を解放してあげられそうなメンバー。

EP7のお茶会はベアト様を救いやすい話だと思うのです。
お茶会後半はどうすれば生存エンドかで頭がry

気付いていると思いますが、↓の「Tea Party」はベアト救出の戦人ルートです。
あとは真里亞ルート熊沢ルートなんかを考えて、個人的に熊沢ルートが1番好みでした。鯖だからだろとか言うなー
ただ、熊沢ルートは文にするのにすごく難易度が高そうなんですよねぇ……
死亡不確定者全員は“黄金郷”にしか見えないので考え難い。

そして、このシミュレーションはあくまで『ベアト様を救う』に特化しているわけで。(Tea Partyもこれ理不尽だよなぁと思いながら書いたのです)
六軒島の皆さん全員救おう!と考えてシミュレーションすると、どうしてもバットエンドになってしまう(;_;)
まず、『ほぼ全滅だから生まれた物語』という壁をなんとかしなくてはですねorz
(追記:人間世界の上の階層を認められない私には、かなりの難題みたいです(ノД`)・゜.)

と、まあ完全に思考の迷路に迷い込んだ椎名が、お師匠様に助けを求めたお話でした。

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