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桜の花の浮かぶ水槽で

鯖も泳いでます

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ただ寄り添って

そこは、かつての黄金郷に足りなかった1ピースを加えた世界。
この世界で私は家具などではなく、安らぎも平穏も、そして――も。
 
 
「やっと言える。僕と結婚してほしい……愛してるよ、紗音」
 
なんて陳腐な言葉なんだろう。
 
――愛してる?
――ずっと一緒にいたい?
 
 
 


繰り返される心地良い囁き。
それでも昔のように舞い上がるような衝動が起こらないのは、『慣れてしまった』などではけしてなく。
そんな言の葉無しには成立しない関係を、とっくに超越していたから。
 
「私も、愛しています」
 
だからこれは、郷に集う観客の為の愛の語らい。
私達はただ、目と目を合わせるだけで、指先を触れ合わせるだけで。
否、例えこの場に貴方がいなくたって、私は貴方に伝えられる。貴方は私に届けられる。
 
 
だからこうして立っている。
はにかんだ貴方の傍で。
冷たく冷えた頬に笑みを讃えよう。
揺らぎもしない眼はガラス細工。
 
誰かが、私達を傀儡だと言った。
或いは、駒だと言った。
全ては幻だと言った。
 
この世界より上に真実があって、この世界より下に現実がある。
ここはその狭間。
叶わぬ夢を叶える理想郷。
誰かがそれを、憐れな戯れだと言った。
 
 
――それの何がいけないと言うのだろう。
 
例えこの無垢で小さな黄金郷のすぐ下に、煉獄の炎が攀り忍び寄っても。
ガラス玉は映さない、目の前の貴方しか。
 
それなら、それで良い。
流れ星を魔法と呼ぶなら叶えよう。
信じ続けることが則ち成就。
 
他人の祝福なんて本当は必要がないのだから。
私はただ、貴方の肩に頭を埋めたい。
腕を絡ませて、貴方に近付きたい。
貴方が病めるときには支えてあげたい。
 
きっともう、このカケラに駒は無い。
一人一人が『自分』を掴める。
それが予定調和だとしても、構わない。
操り糸が切れる時も自由は訪れないけれど、自由こそが幸福などと誰が決め付けたのだろう。
 
 
 
 
さあ、幸せになろう!
(黄金郷にて)


End

―――

紗音の日(4月8日)用だったやつ。
 

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