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桜の花の浮かぶ水槽で

鯖も泳いでます

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二言目には" " Scene1

Scene.1:ワルギリア:バレンタイン数日前

バレンタイン……。
それは、世の乙女達の聖典。
想いを寄せる殿方にチョコレートを贈り、その想いを甘くほろ苦い洋菓子に混ぜこんで伝える日。
今年もロノウェは七姉妹を扇動し、シエスタ達は恋の射撃手として飛び回る。
自分もこのイベントに乗っかりたい一部のシエスタがやけにそわそわしていたり、中には脱走する者もいたが。

世間は浮かれモード。
チョコレートを贈るような相手はいないものの、愛弟子ベアトの恋路を母のように、或いは祖母のように見守るワルギリアも、この日を心待ちに……してはいなかった。

「お嬢様・・・ほんっっとうに健気なことで……」
その最愛のベアトが戦人へチョコレートを贈ろうとせっせと準備しているからだ。
しかも当然のごとく手作り。

別に彼女が料理をすることが問題ではない。
問題が無いかと言われれば赤字で復唱はできないが、不格好だって良い。
努力するという行為に意味があるのだから。
だから、彼女の危惧する問題はベアトの方ではなく。

(戦人君……また突っぱねたら論外として……乙女の手作りを二度も無下にしておいて、今更簡単に美味しい思い出来ると思わないことですね……?)

去年のバレンタインに、受け取って貰えなかったのは仕方ないと言える。
無粋には違いないが、悪いのはベアトだった。

だが今回、外ならぬ彼の手で生み出された雛ベアトリーチェが、彼の為を思って作った料理や菓子を一口も口にしなかったのは、明らかにその時と状況が違う。

……彼の気持ちがわからないわけではない。
戦人は昔のベアトは知らずに愛したのであって、自分はその彼女を育てた存在。
だからこその受け止め方の差は当然ある。

見目と遺伝子が同じなら、性格も違い、自分との思い出も無い双子の姉妹を躊躇いもなく代わりに愛せる事が正しいのか。
記憶喪失の恋人に、記憶を取り戻して欲しいと心の底で僅か程も思わない者がいるのだろうか。
亡くした想い人を、過去にしていくことも蘇らせることも叶わぬと知らしめていた生き証人を、笑顔で受け入れられるだろうか。
(彼女は彼の知る彼女ではないと言うのに、それでも彼女は彼女で)

だから、本当は知っている。
物事に溢れんばかりの愛を持って見ることのできる、大魔女ワルギリアに理解出来ないはずがない。

だが、それはあくまで戦人に愛の焦点を合わせた場合であって。

(すんごい涙溜めてたんですからね!? 必死で堪えてたんですからね!? 後で聞いたら何て言ったと思います!?

"あそこで私が泣いたらお父様に負担がかかるんです……"

かけなさい!どんどんかけちゃいなさ――――――い!!)

というわけで、自分には関係ないが弟子にはありすぎるくらいに関係のあるイベントを目前に、ワルギリアは苛立っていた。
苛立つというレベルで纏めていいのか不安になるくらいに。

「きゃーっ! 今年もバレンタイン、天草様と約束取り付けちゃった☆」
「……留弗夫は霧江といなくていいのだろうか?」

傍でじゃれあっている七杭も当然そんな話題だ。
正直聞きたくもないが、意識が(ベアトの)バレンタインに向かっているせいか、いやでも耳に入ってくる。

(戦人君消す消す消す消す消す消す(ry )


彼女も魔女。
魔法とは……悪く言ってしまえば妄想や嘘。
彼には前科があるとはいえ、妄想にすぎない今年のバレンタイン像を脳内で連続再生し、その度に戦人を※るのだった……。

(はあ。今年は去年のようにこのイベントを楽しめそうにありませんね……。戦人君に何らかの対処を加えるのは確定として、もう少しポジティブに参加したいものですが……)

すると、その問いに答えるように七姉妹達が会話を続ける。

「私はー縁寿様への本命チョコと、あとはみんなに友チョコをー」
「私はマイチョコだよ! 余りを郷田にあげて、今年こそはホワイトデーにぃ~」
「お世話になってる上司にも贈らなくてはいけないわねー去年のこともあるしロノウェ様は特に」
「ロノウェ様にはロノウェ様製のチョコじゃダメなのかなぁ?」
「当たり前でしょッ!」
「そうねー、ちゃんと用意しなきゃ。私はお前達の分も用意してあげるから、感謝しなさいよ?」
「「きゃーっルシファーお姉様さすが!」」
「ルシ姉、サプライズならもっと恰好よかったけどッ!」
「でもルシファーお姉様は戦人様に本命チョコ贈るんでしょー?」
「ルシ姉人気ズルイ! いいもん、私は霧江に師匠チョコ贈るもんねッ」


友チョコ、マイチョコ……ルシファーは、妹チョコ?
師匠チョコなんて初めて聞いたけれど。

ガァプやゼパフルのせいで忘れていた、何も好きな男にやらなくても良いのだ。
去年だってそうやって七杭の一部が同性に贈っていた。
マイチョコや友チョコに興味はないが、……師匠がアリなら弟子も。

(いけません、弟子チョコと言ったらベアトにチョコかけるの想像してしまいました)

うん、可愛い。
何やったってベアトは可愛い。
それは置いておくとして、自分もベアトに贈ればいいじゃないか、と気付いたのだ。

(ええ、それがいいです!)

だが、愛は一方通行では淋しい。
恋路に片想いはあっても、師匠と弟子の関係で師匠の一方通行とは虚しい気がする。
というか戦人にやって自分にないというのはおかしい。
自分にもくれるべきだ。
そこまで思考が至ると、ワルギリアは蝶になり、ベアトの元へと向かった。

「お嬢様!」
「……お師匠様?どうした?」

ベアトはどこか興奮した様子の師匠に首を傾げた。

「あ、いえ。ベアトは戦人にチョコを贈るのでしょう?」
「……はい」

咄嗟に敬語になり、少し頬を紅く染めて俯く。
その反応にどこか面映ゆくなるが、今はそれよりも。

「その……私にもくれませんか!?」

ベアトは、一瞬驚いたように小さく目を見開いたが、すぐに微笑む。

「うむ、お師匠様……義理でよければ


「……え?」

ワルギリアは、聞こえたその単語を再確認する。

「義理? えぇと、それって師匠チョコってことですよね? もしかして母チョコですか? 千歩譲って友チョコ!?」
「……? 義理義理だぞ?義理以外の何でもな……」


……


…………

「どうした? 義r
「もうやめなさぁあぁぁ―――――い! ひどいですベアト! そうですか、そう言いますか。心配した私が馬鹿でしたね、えぇ! あなたなんてもう知りませんッッ!」

義理、に内服された可能性を全否定された上連呼されたワルギリアは、涙ながらに去っていった。そして戦人への怨念が、今度は半ば八つ当たりの形で増大したのだった。

「何だったのだ……?」

(弟子&師匠チョコで頭がいっぱい。ルシファー対策を完全に忘れた鯖様の話)



――――

February.10.2010

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