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桜の花の浮かぶ水槽で

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Asymmetry(正義様より)

私なんかがキリ番を踏んでしまいまして、リクエストさせていただきまして、素敵なSSを頂いて参りましたです。
趣味全開のリクですみませんですw

それは些細なことだったのかもしれない。
少し、帰りが遅くなったとか、
少し、会話が減ったとか、
少し、笑顔がなくなったとか。
そんな些細な積み重ねが、今の俺達をつくったのかもしれない…。


Asymmetry


「…っ、戦人、そなた妾に何か言うことがあるのではないか?」
ベアトリーチェは悲しそうに憎らしげに、帰ってきたばかりの戦人を玄関先で睨みつけた。
「ん? ただいま……ふぁ、ベアト、なんか話があるなら、明日にしてくれ…疲れてるんだ」
俯いたまま靴を脱ぎ、戦人は自室へと続く廊下に足を乗せた。
「…戦人っ、そなた最近、いつも遅いぞっ?!」
「……しょーがねぇだろ? 色々あんだよ、俺だって…はぁ……明日聞くから、はいはい。おやすみ、ベアト」
「なっ、待て、戦人っ!!」
欠伸をしながら、戦人は自室の扉を閉めた。
結局、ベアトリーチェとは一度も目を合わすことなく、泣きそうな顔で戦人を引きとめようとしていた彼女の顔を見ることなく、戦人は一人ベッドに入り眠った。
「……そう言って、話を聞いてくれたことなんてないじゃねぇかよぉ…戦人のばかぁ」

朝、目覚まし時計の音で目が覚めた戦人は半分眠ったままの状態で、顔を洗うと身支度を整え、リビングに向かった。
「…はよー………ん? ベアト?」
いつもなら、一生懸命戦人の為に朝食を作るベアトリーチェがキッチンに居て、戦人に笑顔を見せてくれるはずだった。
しかし、その姿は見当たらず、戦人は首を傾げ、テーブルの上に置かれた食パンをトースターにかけ、湯を沸かし始めた。
「…ふぁっ…あーちくしょう、眠いぜ………」
戦人は椅子に座り、天井を眺めた。
「…ベアト…どうしたんだろうな…。見に行くかなぁ」
ぼぅっとした頭で、ただベアトリーチェの顔が見たくなって、ふらりと立ち上がった戦人の耳に、パンの焼けた音と湯の沸いた音が聞こえた。
「…はいはい………あちっ」
焼けた熱々のパンに赤いイチゴジャムを塗り、インスタントコーヒーを作り、今日の戦人の朝食が出来上がった。
「…いただきます」
もそもそと一人寂しく朝食を済ませると、ベアトリーチェの部屋の扉の前に居た。
「…ベアト? 起きてるか? 入るぞ?」
軽くノックをしつつ、そう宣言すると、戦人は静かに扉を開いた。
「………」
ベッドの上には、すよすよと小さな寝息を立てベアトリーチェが眠っていた。
「…っひひ、なんだ、寝坊かよ………ベアト、行って来るな」
戦人は静かにベアトリーチェの額に口付けると、家を出た。


そんな小さなすれ違いが、段々と増えてきた頃、戦人は見てしまった。


「…っと、今日は早く帰れたなぁ…そうだ、ベアトにアイスでも買っていってやるか……寂しい思いさせてるよなぁ…」
最近は特に忙しく、家で待ってくれているベアトリーチェにかなり寂しい思いをさせていると、戦人も自覚していた。
だから、珍しく早く帰れた今日はご機嫌伺いも兼ねた手土産のアイスを一緒に食べ、べったべたに甘やかしてやろうとそう思っていた。
「ん? ベアト?」
戦人は立ち止まり、ベアトリーチェが気に入っている喫茶店をじっと見つめた。
そこには、なにか真剣な表情のベアトリーチェと、五十鈴の姿だった。
「…何してんだ? あっまさか、五十鈴のやつ、俺の事であることないことを吹き込んでるんじゃねぇだろうなぁ?」
五十鈴は、戦人とベアトリーチェの共通の友人だ。だから、別に一緒にいることに不信感を抱くことなく、戦人はベアトリーチェと五十鈴に手を振ろうとした。
「………え、ベアト…?」
泣いていた。
ポロポロと綺麗な涙を流して、ベアトリーチェは泣いていた。
そして、それを慰める仕草を見せる五十鈴の姿に、戦人は言い知れぬ強い感情を感じ、その場から立ち去った。
「………っ」
強く噛み締めた唇から、錆びた鉄の味がした。


なんだよ、何泣いてんだよ。
俺じゃない奴の前で、
俺が見えないとこで、
俺のいない場所で、
なんで、泣いてるんだよっ…!!

お前は、俺のもんだろう…ベアト…っ!


買い物袋を提げたベアトリーチェが、リビングに入ってきた。
「………おかえり」
「うわっ?! ば、戦人? 帰っておったのか?」
薄暗いリビングに、いつも帰りが遅い戦人がいるはずないと思っていたベアトリーチェは心底驚いた。
「…帰ってちゃ、悪いのか?」
「い、いや、そうは言ってないであろう? というか、早く帰るなら、メールでもしてくれれば良かったのに…戦人が早く帰ってくるなら、ひさしぶりに外食でもいいしな」
機嫌の悪そうな戦人の様子に、ベアトリーチェは内心怯えながら、夕食の支度を始めようとキッチンへと向かった。
「……なぁ? ベアト、今日、泣いたか?」
がさりっと耳障りな音を立て、ベアトリーチェは戦人を見た。
「…ば、とら? 何の話だ…?」
「………いや、最近一人にする時間が多かったから、寂しくて泣いてるんじゃないかと思ってな。ベアトは寂しがり屋さんだからなぁ? いっひっひっひ」
にっこりと笑う戦人を見て、ベアトリーチェは安心したように頬を膨らませた。
「な、泣いてなどないわっ、別に一人でも平気だぞっ?!」
「はいはい、強がり強がり…あ、ベアト、冷凍庫にアイスあるからな」
「強がってなどっ、ってアイスっ?!」
アイスと言う言葉に、ぱぁっと顔を輝かせ、持っていた買い物袋をテーブルに置くと、ベアトリーチェは冷凍庫を開いた。
「…はぁー、アイスぅ…なぁ、戦人戦人、そなたはどれ食べるのだ?」
くるりと振り返ると、戦人の顔が目の前にあった。
「…っ?! ふぇ? な、なんだ?」
「…ベアトは、嘘つきだなぁ?」
そっと頬を撫でる戦人の瞳は、ベアトリーチェだけを捕らえていた。
「っ、ば、戦人?」
「…んっ、涙の味がする………泣いてたろ?」
ぺろりと頬を舐められ、ベアトリーチェは目を見開いて硬直した。
「…どこで泣いたんだ? 誰と一緒だったんだ? どうして、泣いていたんだ? なんで、俺の前じゃなかったんだ? お前は俺のだろ?」
じっとりとベアトリーチェを捕らえ続ける眼差しを向けたまま、戦人は綺麗に嗤い矢継ぎ早に問いかける。
「なぁ、ベアト、ベアトリーチェ、答えろ………お前は俺のだろ?」
「…っ、ぐぅ…ったい、いたいっ、ば、とらぁ、痛いぃ…」
ぎりぎりと強い力がベアトリーチェの細い肩に食い込む、その痛みに身をよじるが、戦人がそれを許さなかった。
ベアトリーチェの顎を無理やり上を向かせ、唇を繋げた。
「答えられないのか? 悪い子だなぁ………んっ…お仕置きが必要か?」
「…ぅあ…んぅ?! んんっ…ふぁっ? …はぁ、はぁ…ば、戦人ぁ? なんで、怒ってるのだ…」
「……なんで? 心当たりがあるんじゃないのか?」
目じりに涙を溜めたベアトリーチェを見て、嬉しそうに戦人は嗤うと目じりに口付けた。
「…ひぃぅ…い、たい…痛い」
「ベアト…じっくりとわからせてやるからなぁ……お前が誰のものかをな…」

―――俺を見ろ、俺だけを見ろ。
お前だけが俺を束縛していいんだから…

戦人の言葉が呪詛のように、ベアトリーチェに絡みついた。





ある日の帰り道に、戦人は全てを知った。


「あ、戦人じゃねぇか」
「…五十鈴」
親しみを込めた表情で戦人を見る五十鈴の姿に戦人は、五十鈴が憎くて堪らなかった。
「…ん? なんか機嫌でも悪いんか? あー、ベアトちゃんと喧嘩とかじゃねぇだろうな?」
「…別に、喧嘩なんかしてねぇよ」
「そうか? っしかし、戦人もさぁ。ベアトちゃんって言う可愛い彼女が居るんだから、いくら友達だからって言っても親身に相談に乗りすぎるのは駄目だぜ?」
「はぁ? なんの話だ?」
戦人は、得意げに話す五十鈴の様子と、その内容に首を傾げた。
「…あー、実はな」
五十鈴が話したその内容に戦人は、少し後悔した。
始まりは自分の軽率な行動からだったのだから…。
「…なんかさぁ、ベアトちゃん、戦人が泣いている女の子と一緒に歩いてマンションに入るのを見ちゃったんだと…まぁ、何もなかったのは知ってるけどさ」
「………なんで、知ってるんだ?」
「まぁ、話を聞けよ…ベアトちゃんもさ、お前に聞こうとしたんだが」
「…忙しいって言って、ろくに話を聞かなかったな」
「……らしいな。ん、まぁ、それで、俺に相手の女の子のこと知ってる?って…まぁ、知ってたから、その子に直接聞いたんだ。なんでもすっげぇ、ひどい男に捨てられたんだって? んで、此間その事をベアトちゃんに報告したって話なんだが…」
此間と言う言葉に戦人は、五十鈴に尋ねた。
「その時……ベアト、泣いたか?」
「…ああ、戦人を信じたいのに、疑ったことに対しての罪悪感と、やっぱりそんなことなかったっていう安心感でな…すっげぇ、困ったよ。俺が泣かせたみたいで…」
まいったまいったと、頭をかく五十鈴に聞こえない声で、戦人は満足気に笑い呟いた。
「…そっか、あれは俺の為に泣いてたのか…っひっひ」
「ん? なんか言ったか? あ、やべ、時間が…んじゃ、俺もう行くな」
「ああ。五十鈴、悪かったな」
笑いながら、手を上げる五十鈴に戦人も手を振った。
「あっ! そうだ、つまんねー喧嘩とかすんなよ~? 戦人とベアトちゃんはバカップルで居てもらいたいしなっ!!」
「…なっ、バカップル言うなっ!!」
最後にさわやかに捨て台詞を残していった五十鈴の言葉に戦人は叫ぶと俯き、嗤った。





ああ、駄目だ。全然駄目だ。
そういう話はもっと早く教えてくれねぇとなぁ?
もっと、早く教えてくれれば、壊れなかったのになぁ…いっひっひっひ

でも、もう遅いし、手離す気は初めからない。
アレは、俺のモノだ…俺の、俺だけのもの


「ただいま。ベアト? いい子にしてたか?」
戦人は、込み上げてくる喜びを押さえきれずに、歪に嗤いながら扉を開いた。
「戦人ぁっ!!」
部屋に入った瞬間にベアトリーチェに抱きつかれた。
「っと、どうしたんだよ?」
「戦人っ、遅かった…」
ぐりぐりと戦人の胸に顔を擦り付けるベアトリーチェの頭を撫で、戦人は時計を見る。
「…ああ、ホントだ…ごめんなぁ? 許してくれよ」
「…や、だ…戦人、妾を置いてどこに行っていたのだ?」
じっと戦人を不安げに見るベアトリーチェの頭を撫でながら、戦人は言った。
「ベアトを置いていくつもりなんてないぜ? 俺の可愛いベアトを置いていくわけないだろ?」
「…ん…でも、妾、一人だった…戦人、妾を一人にしないで…妾を置いてかないで……」
「ベアト…っ、んっ…」
「妾を置いて、妾を一人にして、どこにも行かせるものか…っ」
戦人に抱きついていた腕がいつの間にか外され、戦人の首にベアトリーチェの白い指が絡む、そして、少しずつ力が込められていく。
美しく微笑み、戦人を映しているはずの瞳に焦点はない。
「はっ、ぁ…べあ、と……いっ?!」
ぶつりと嫌な音を立て、戦人の首筋に傷が入った。
それを見たベアトリーチェは、正気に返ったかのように一歩後ろに下がった。
「戦人は、妾のものだ…妾の…っ?! ぅあ…戦人…あ、すまぬ…ごめんなさい、ごめんなさい…」
子供のように、床に座り込み両手で顔を覆い、震えるベアトリーチェを見て、戦人は思う。
『可愛いなぁ、そうなんだよ。ベアトはもっと俺を束縛すればいい。そうすりゃ、俺だけしかベアトは見ないし。そして、俺もその分、いや、それ以上にベアトを束縛できるからなぁ』
戦人は今のベアトリーチェの様子を見て、同じように床に座り、ベアトリーチェを見て満足気に嗤う。
「………いや? いいぜ? 俺はベアトのものだからなぁ?」
首から手を離したベアトリーチェの白い手を捕まえ、自分の血を舐めとる。
「…んっ…戦人ぁ…血が出ておるぞ?」
「ん? そうだな………ベアトが舐めてくれよ」
嗤いながらそう言うと、ベアトリーチェが戦人の首筋に顔を近づけ、舌を伸ばした。
「…んっ…」
ペロペロと舐めるベアトリーチェ、彼女の金色の髪の隙間から、白い肌が見えた。
「…ベアト…んっ…」
誘われるがままに、戦人は舌を這わせ、軽く歯を立てた。
「……んっ?! ふぁ…あっ…戦人っ」
「ベアト、ベアト……っ」
戦人はきつくそこを吸い上げた。
「んんっ?! はぁはぁ…戦人ぁ」
「…はぁ、ベアト、ベアト…俺を見ろ、俺だけを見ろ」
戦人は、ベアトリーチェの頬に手をあて、自分の顔を近づけ言葉を紡ぐ。
ベアトリーチェは、戦人しか映っていない瞳で戦人を見て、うっとりと戦人の名前を呼ぶ。
「ん、戦人、戦人ぁ…」
「イイコだ…ベアト、ベアトリーチェ……愛してる。だから、俺だけを見ろ…」
それを聞いて、感じて、戦人もベアトリーチェしか映っていない瞳でベアトリーチェを見て、愛おしさの中に歪な感情を込めて名前を呼ぶ。
「戦人ぁ、妾も…愛してる。だから、妾だけ、妾だけを、愛して?」
「ああ、お前だけを愛し続けるよ。ベアトリーチェ」
二人はお互いを見合い、くすくすと嗤いあいながら、戦人とベアトリーチェは身体を寄せあった。


戦人とベアトリーチェの二人だけの世界が、歪んだ完成された世界がそこにあった。
狂気で彩られた感情で互いだけを必要とした、
誰にも理解できない、間違った世界なのかもしれない。
けれども、それは確かに二人だけの小さな完全なる世界―――








――――

というわけで、正義様に頂いた品です。
キリ番狙いに行ってゴメンね!wそれにしても3838が取れなかったのが悔しry
うちのパソコンのスペックのせいでコピペ出来ない><と言ったらわざわざテキスト送ってくださいました~なんて優しいっ

ちなみにこんな感じでお願いしました。↓
「お互いに浮気疑惑が出てどちらかが病むバトベア」
……こ、こんなアレなリクを素敵な作品にして下さりありがとうございましたああああm(_ _)m

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