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桜の花の浮かぶ水槽で

鯖も泳いでます

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I can have seen you again. So these are nice days(恵雨様へ)!


恵雨様へ

リクエスト内容
『ループを抜け出して帰って来た戦人と縁寿』



――――――――

一つの愛が支配し、凌駕するこの郷で。
多くの愛が埋もれ、呻き出すの。
――
寂しかった、というのは正しいと思う。
けれど、怖かった、というのは?

たった二日。
一人きりで過ごした夜を数えるなら三晩。
たったそれだけなのに。

「おかえりなさい、お兄ちゃん」

縁寿の眼に映った戦人は震えていた。
ともすれば、泣きそうだったのかもしれない。

(わたしのひとみがぬれていたから、そうみえたのかな)

「縁、寿。待たせてごめんな」

(・・・・そういって、お兄ちゃんはだきしめてくれました)

留弗夫は驚いていた。縁寿と戦人の、兄妹の過剰な再会に。
霧江は笑っていた。まだまだ子供ねぇ、と言って。
縁寿は、・・・・泣いていた。

(・・・・だれもかえってこない、ゆめをみたの)

奈落に突き墜とされたような、その慟哭。
縁寿に語りかけた二人の少女-縁寿にとっては女性、だけれど-。

『ねぇ、奇跡を信じる?』
『あなただけなのよ。私のところには来なかったもの・・・羨ましいわ』

青と赤の髪を持った二人は、理解できない(けれどしてしまう)真実を告げた。

(唯一黄金は堕ちました)



I can have seen you again.
So these are nice days!



「はやくはやく、お兄ちゃん!!」

必死で足を止めようとする戦人の腕を、縁寿はひいていく。

(妹に本気で抵抗はできません)

「ま、待て縁寿。お前は乗れねぇぞ、年齢も身長も足りないからな!!」
「うん、だからお兄ちゃんがのってるのみてる」

縁寿が指差す先は、至極当然に絶叫マシーンと呼ばれる類のものだ。
何故縁寿が戦人を乗せようとしているかというと、両親が『戦人はジェットコースターが大好きなんだよ』なんてデマを娘に吹き込んだからだが、そもそも二人が来ているのは遊園地ではない。

いや、広義でいえばジェットコースターなるものがある時点で遊園地と言えるのだが、メインは動物園である。

(親父に騙されたぜ・・・)

こんな、揺れる乗り物だらけの場所だと知ってたら来るもんか。
え、大事な妹のお願いを卑下にするのかって?

(可愛い妹だから情けねー姿兄として見せらんねーだろぉぉぉぉ!!)

「縁寿、俺も駄目なんだ。実はあれは二十歳未満は乗れなくてな」
「ふーん?」

ちらりと脇を見る。
明らかに戦人より年下の中学生達が入っていくのが見えた。
が、縁寿の中で兄の言うことは絶対である。

「わかった!!じゃああとにねんまってるね!!」
「う・・・っ」

完全に墓穴を掘った。
これで再来年乗らなくては行けなくなってしまったじゃないか。
二年で完治する程度なら、既に平気になっているだろう。
もう、十八歳なのだから。

「縁寿ー、せっかく動物園来たんだから動物見ようぜ動物」
「うんっ」

そんでついでに忘れてくれよーと胸の中で唱える。

「じぇっとこーすたーはにじゅっさいー!!」
「・・・ッ、だーッ!!忘れろ忘れてくれーッッ」

――――

 『じゃあな縁寿、いい子で待ってろよ。シーユーアゲイン、ハバナイスデイ』

熱を出して六軒島に行けなくなった縁寿に、戦人が「いってきます」の代わりに言った。
それじゃ「いってらっしゃい」だ、と父が馬鹿にしていて。

『しーゆーあげいん、はばないすでい』

意味は分からないけれど、大好きな兄の言葉だから、一人きりの暇な時間(二日間、いくらでもある)に繰り返した。

『また会いましょう。良い日を』

再び会える前提の台詞。
そしてその通り当たり前に過ごす、1986年親族会議後の家族との時間。


――――


「ぞうさん、ぞうさん!!」

駆け寄った先には、ゆったりと歩く、灰色の大きな獣がいた。

「縁寿、それは象じゃなくてカバだぜ。象、見たことないのかよ?」
「ない・・・」
「よっしゃ、見せてやる。こっちだ」

優しい兄はまるで悪戯っ子のように笑う。
戦人は縁寿に歩調を合わせるが、動物園なんて穏やかな場所ではろくに抜かされることもなかった。

「みえないー・・・」
「・・・」

目的の檻の前に着くと、調度参加型の企画をやっていたらしく人垣が厚い。
薄くても縁寿の背丈では到底見えないのだけれど。
戦人ぐらい身長があれば見えるだろうなあ、と考える。

「・・・」
「お兄ちゃん?みえないー」
「・・・へ!?あ、見えねえか、よし、肩車してやるぜ」

よっこらせ、と若者らしくないことを言いながら軽く抱き上げる。

「みえた!!・・・ぞうさんみえた!!かわいい!!」
「そうかー。このデカブツにいきなり可愛いっつー感想は変わってる気がしないでもないがそりゃよかったぜ!!」
「つぎきりんさんー!!」

初めて見る象に満足した縁寿は、その次は、その次は、とどんどん候補を出していく。

「お兄ちゃん?」
「え?あ、なんでもないぜ。近いとこから回ってこうな」

(遊園地、動物園、あとなんだっけ・・・学校に映画館・・・?)


――――


『なんで、こんな真冬にアイスケーキなんか買ってくるんだよ』
『なんでって、もうすぐクリスマスじゃねーか?』

家族全員分のアイスケーキが入ったクーラーボックスを抱えて帰って来た父親に、戦人が呆れたように言った。

『もうすぐはもうすぐであって今日じゃねーよ!!つかせめて普通のケーキにしろよ!!』

買ってきてしまったものは仕方ない、と戦人の抗議を無視して霧江と留弗夫は皿の用意をする。
まあ、確かにもったいねーからな、と折れた戦人も席につく。
縁寿は勿論、ケーキがあると聞いただけで喜んで、既にフォーク片手に待っている。

『あら、食べないの?戦人くん』

席についたから食べるのかと思ったわ、と霧江が尋ねる。

『・・・やっぱり、冬にアイスは邪道だと思うので。ほらやるぜ、縁寿』

差し出された皿。
とろり、溶けかけたケーキにフォークを刺すと、少しだけ後ろめたい気がした。

・・・誰かの分を、取ってしまった気がして。

(わたしでも、お兄ちゃんでもない)


――――


不思議なもので、そんなことを思い出しているとうまい具合にアイス屋のワゴンがあるのだ。
いや、遠目にそれが見えたから、こんな回想をしたのだっただろうか?

「お兄ちゃん、アイスがたべたい」
「・・・縁寿、今十二月だぜ?ってこの間親父に言った気がするな」

遺伝だろうか。

(でも俺は却下だぜ・・・)

そうは言っても、子供がアイスを食べるのに季節が関係ないのは割合普遍だ。
とりあえず留弗夫の季節勘狂いとは違うだろう。

「しょうがねーなあ。すみません、一つ・・・縁寿何がいい?」
「いちご」
「じゃあストロベリーで」
「お兄ちゃんは?」
「は?」
「お兄ちゃんはたべないの?」

だから今十二月だって・・・と言おうとしたが、縁寿が不満そうにしているのに気付く。
いや、不満だったらただの我が儘で片付けるのだが・・・。
どこか、哀しそうな顔をしていた。

「わたしといっしょにたべたくないの?」
「う・・・」

腕をぎゅっと握られる。

(あー俺、縁寿に弱すぎ)

「わかったって。すみません、バニラ追加で」

「・・・」
「・・・」

縁寿と戦人は、縁寿の握りしめるそれを凝視した。
それ、とは説明するまでもなく先程買ったアイスに違いないのだが。

「・・・」
「・・・追加って言ったのが悪かったか」

店員は自分達の会話を全く聞いていなかったらしい。
手元にあるコーンには、ストロベリーアイスと、その上にちょこんと白い物体が乗っている。
いやまあそれもアイス以外の何物でもないのだけれど。

生憎戦人は、一度作って貰ったものを作り直させる、なんてことを言い出せる性格ではなく、乾いた笑いだけで受け取ってしまった。

「別に俺はそこまで欲しくねーからさ、全部食べていいぜ」
「やだ」
「買い直しなんて勿体ねーことしねーぞ」

あくまで要らない、という兄に縁寿はぷぅと頬を膨らませる。

「はんぶんこなの!!」

ちょっとずつ交換ね、とと言いながらぺろりと一口舐めると、すぐに戦人の口の前にやる。

「一口しか食ってねえじゃねーか」
「ちょっとずつっていったよ」

(妹だし六歳だし、別に問題ねーよな?)

だけどなぜか留弗夫に睨まれる場面が想像出来る。何故。
無邪気な笑顔につられて、そのまま一口(六歳の少女と男子高生の一口は違うため、気を使いながら本当に少し)舐める。

「ほらよ、次は縁寿の番だぜ!!」
「うん!!」

「アイスが大好きな魔女様がいたんだ」

ダブルだというのにちまちまと交互に食べていた為、途中で溶けだしてきたアイス。
結果、残りのアイスを縁寿、コーンは戦人が全て食べるというところで終結した。
よく考えればそれが一番利害が一致するわけで。

「それってベアトリーチェ?」
「なんだ、縁寿は知ってたのか」

知ってるもなにも真里亞に誘われて入った「マリアージュ・ソルシエール」の魔女だ。

「黄金の魔女」ベアトリーチェ。
一年以上経った今でも思い出せる、彼女の美しく長い「金色の髪」。

『唯一、黄金だけが堕ちました』

(-・・・え?)

「あいつも、寒かろうが関係なくアイス食ってたなあ、と思ってさ。自称1000歳のくせにさ」

ヒュウ、と例年並みの寒さを纏う北風。
寒風に髪が乱れて、兄の表情が見えない。

(けれど、ないてるきがしたの。かえってきた、あのひのように)



「おかえりなさい、お兄ちゃん。おかえりなさい」



「いってきます」はなかったけれど、「おかえり」には答えて欲しい。



「ああ・・・ただいま、ただいま縁寿」



あなたの傷だけは、時と私が癒します。
(この幸せために何かが犠牲になったのだとしても)

End

――――

恵雨様のみフリー。
クレーム(返品、交換、訂正)等も恵雨様のみ無期限に受け付けます。

ここのUP止めて欲しい時も言って下さいね^^

駄文失礼しましたm(_ _)m

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