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桜の花の浮かぶ水槽で

鯖も泳いでます

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golden drop(正義様へ)

リク内容
『バトラ卿×出題編ベアト』



――――


(あなたが見つけたものが奇跡への鍵なら、どうかそれを燃やして灰にしてしまって下さい)


恐くて仕方がなかったのだ。
また、間違いだったら。また、出来損ないだったら。
(たとえ入手経路から違うと解っていたとしても)
失った最愛の人が、寸分の狂い無くその魔女が、――――欲しかった。
絶対に失わない手段で、逃がさない方法で。


   *  *  *


よく考えなくても、健気な魔女だ。
ベアトリーチェが何を求めているかなど、そこの男には到底わかりはしないというのに。

「跪けよ戦人ァ? どうせ解けねえんだろこの無能が! くっひゃひゃひゃッ!」
「ま、まだ! まだ何か、あるはずなんだ! 俺は認めない、絶対に魔女なんか認めない!!」
「認めちまえよぅ、屈服するなら存分に可愛がってやるぜェ? 1番の家具に、1番の玩具に、お前を据えてやるぜぇ、『当分は』なァ?! あっひゃひゃひゃひゃ」

虐げて、罵倒して、囃し立てて突き落として。(泣く)
どうしてこんなにも。(愛おしいのだろう)


  *  *  *


魔女の寝室に、喘ぎとも取れる声と金属音が響いていた。
手を動かすたび鎖が嫌に無機質な音をたてて、心地良い。矛盾こそが悦楽だ。
それ以上に愚直な囀りが堪らなく気分を昂らさせる。

「ひ、……跪けよばとらぁ……、こ、この無能…………くッ!」
「おうおう、んで?」
「く……屈服するなら、可愛がって……やる……ぞ……ぅぐ……」

それほど力強く引っ張っているつもりはないのだが、静止しているのと喋っているのではやはり後者の方が締め付けが強いらしい。
鉄で出来た鎖の先には、魔女の麗しい首。
否、それを我が物とする醜悪な拘束具(或いは己の執着心)がある。

「見れたもんじゃねぇぜベアトォ? こんなザマで意気がる魔女様はよぉ」
「そなたが……言えと言ったのではないか」

その通りだな、とバトラは嗤った。

「愉快だよなぁ、昼間は屈服寸前の『戦人』を蹂躙するお前が、アイツに吐くのと同じセリフを繰り返してるだけだってのに」
「こんなことして……たのしいのかよぉ……」

楽しいのかと、そう問われればどうとも答えられない。よくわからないのだ。

ただ、本物だという証明が欲しかった。
あのベアトリーチェと同じことをさせてみようとけしかけて、アイツばかりずるいから自分にも言えと命じた。
何故かどうしても嫌がるから、逃がさないようにと首輪を付けてやった、それだけなのだ。
それは言ってしまえば子供じみた独占欲だと言うのに、他の感情を考察しなければならないのか。

………楽しい。楽しい?
それが人間の持つ感情であること思い出し、バトラは盛大に自嘲した。

「……………。ああ、愉シイぜ? ほらほら、続きがまだあるだろ?」
「み、認めれば……妾の家具にしてやる……」
「いつまで?」
「………ぐ、と、当分んんん」
「当分ねぇ? いっひっひ」
「う、ううぅう」

虚勢を張っているのが丸わかりで、笑うしかない。
もちろん、口に出して唏った。



おかしいと思わないこともないのだ。
抱きしめることさえも叶わないはずだったこの魔女に、逢えるだけで満足だと考えていたはず。
二度と苦しめないだとか、青臭い誓いをしたはず。
なのに今、こうやって彼女を玩ぶことに背徳感を持つどころか昂揚ばかり感じる。
全く、良心だの愛だのというは都合のよく出来たものだ。

「何だよ、こうされるのが好きなくせによぉ。嫌いならわざわざ昼間、あんなこと言えねぇよなぁ? どうなるか学習しないほど馬鹿じゃねぇだろ?」
「違う……………そんなんじゃ…………」
「しかし、やっぱりすげぇなぁ本物は」

バトラはこれまでになく強く引き上げ、口付けんばかりに顔を近付けた。
唇が触れ合うことはない―――気まぐれか或いは躊躇いだろうか、自分にもわからない―――はずなのに荒い呼吸がかかり、交わっているような気分になる。


「こんなザマでも、結構クルんだもんだな」

紛い物とは何もかもが違う。猜疑心に蝕まれることはもうない。

「苦しい……外して……」
「あ、キツイのか?」

慮る心を今の今まで忘れていたとでも言うように、首を傾げたバトラは左の手で鎖を捉えたまま、右を鈎にかけた。

「いいぜ、外してやる」
「…………痛ッ!」

辛うじて取っ掛かりだけは外された首元の呪縛を、乱暴に引き剥がす。
尖った装飾がベアトリーチェの首に牙を剥き、とろりとあかく熱いものが流れ落ちる。
(赤い、ベアトリーチェ)

バトラはそれを零さぬよう人差し指で掬い上げ、自らの口に含む。
鉄臭さを携えた彼女の液は、予想以上に甘かった。
(それはどんな極上の赤ワインより美味)

庇わせぬようベアトリーチェの両手を封じ、続いてどくどくと紅の流れ出る、白い首筋に顔を寄せる。
柔らかく啄み、じんわりと生温かい舌を這わせて先で奥で堪能する。

「バトラ……何す……痛ッ」

ベアトリーチェがその美しいかんばせを苦痛に歪めた。
彼女の傷口を広げるように、白いものを埋めていく。
そして烈しく脈打つ動脈から、音をたてて強く啜り上げる。
大きく喉仏が上下した。

「もしもアイツが心臓を貫くときが来ても、俺はお前の血をアイツにくれてやる気はねぇんだよ。……一滴もな」

この場に存在してはならない自分に心臓を貫けぬ制約があるのなら、心臓の価値を無くしてやる。
失望すれば良いのだ、この魔女には血も通っていないのかと。
そうすれば、アイツはベアトリーチェを救えない。自分が抱き留めてあげられる。

「い、いたい、いたいいたい………やぁ……うぎ…ぁ……あッ」
「そりゃあ痛いよなぁ、俺は吸血鬼じゃねぇから牙なんか持っちゃいねぇ。ガリガリやるしかないからなぁ」
「やめて……頼む……」

バトラは愛おしげに魔女の赤を吸い込んだ。
恍惚の表情の裏に、薄汚い貪欲さと慈愛。

「ああでも、こんなに深く入ってる」
「……………ッ……ぁ……ぃゃ……痛イ……」

口元から漏れ、下に落ちてびちゃびちゃと水音がする。
カーペットに染み込んでしまい勿体なかった。全て自分が飲み込んでしまいたかったのに。

相変わらずベアトリーチェは息を弾ませながら苦しがる。
バトラは一度口を耳元に移して低く囁いた。

「ごめんな、もう少ししたら楽ニナルからな……」
「え………?」

ろくに時も経たないうちに、ベアトリーチェはがくりとうなだれる。
血の気を失ってつめたく青ざめた魔女は、そのままもの言わぬ人形になった。

それでもバトラはじわじわと冷めてゆく雫を貪り続ける。
他でもない彼女が至高とまで宣うた、最後の一滴を誰にも渡さないように。

「愛してる…………愛してる愛してる愛してる………俺の黄金の魔女ベアトリーチェ…………」

それは壊れたレコード。
狂い咲きの愛を囁くだけのレコード。
こうやって、最愛の魔女を抱きしめて自分は、

――――倒れ込んだ魔女の髪を優しく梳き、魔術師もまたぐらりと崩れ落ちた。


   *  *  *


(赤と、金色)
強欲なニンゲン共が夢見し黄金の郷で、あかいあかいカーペットに二つのしかばねが出来上がる。
ニンゲン共が求めし黄金を清廉に汚し、叫び声が上がるのを今か今かと待ち侘びる。
辿り着きしニンゲンは言うのだ、「彼らは二度と目を開けることはないだろう」と。

(どうせ目覚める。死ぬわけがない)

――――願わくば、共に逝けたらよかったのに、と未練がましく考えるのだ。
無限を繰り返す魔女と魔術師の身に、それは叶わないというのに。
だから、三途の川で溺れる夢を見よう。赤褐色の海に流れ着こう。


魔女の生き血を啜る
(君ヲ残ラズ取リ込ンデ、溢レテ壊レテシマイタイ)


END


――――


いや本当にこんなもの送りつけてごめんなさい。
でも、あんだけバトラ卿がノればね? 影響されても仕方ないんですっ(キリッ

返品交換他は、正義様のみ無限に受け付けております。

では、失礼致しましたm(_ _)m

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