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桜の花の浮かぶ水槽で

鯖も泳いでます

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欲しいもの一つ(正義様より)

またキリ番を踏ませていただきまして、厚かましくも例によってアレなリクエストをしてしまいました。



初めて、その女を見たのは、戦人がまだ子供の時だった。

「…祖父様…?」
祖父である金蔵に呼ばれ、書斎に足を踏み入れた。
「………」
しかし、戦人を呼びつけたはずの金蔵は、戦人に気がついていないようだった。
『…何見てんだろ?』
熱心に何かを見つめる金蔵を見て、興味がわいた戦人はゆっくりと近づいていった。
「………」
金蔵は一枚の写真を持っていた。
そこには、金色の髪に青い瞳のとても美しい女が微笑んでいた。
「…っ、きれい…」
「っ?! おお、戦人か…」
驚いた金蔵は、ようやく戦人を視界に入れた。
「祖父様、それ、だぁれ?」
じぃっと何かに魅入られたかのように、熱心に金蔵の手の中を見つめる戦人の様子に、金蔵は目を細めた。
「…ベアトリーチェ」
「…べあと、りーちぇ? 綺麗な人だな…」
「そうだろう。もう、いない女だ…」
戦人の頭を撫でながら、金蔵は大事そうに写真を引き出しの中に納めてしまった。
それを残念そうに、戦人は目で追った。

それが、初めて彼女を見た時だった。


次に、彼女を見たのは、やっぱり子供の時だった。

屋敷で父である留弗夫と口げんかになり、母である明日夢の制止を振り切って、戦人は屋敷を飛び出していた。
戦人は、走った。
入ってはいけない、そう言われていた森の中にも入り込んで、戦人はただひたすらに走った。
「…っ」
どこをどう走ったのかわからないが、だいぶ森の奥深くまで来てしまったようだ。
「…はぁ、はぁ…っ」
急に、戦人は怖くなった。
森の中に狼なんていないけれど、独特の静けさと、薄闇の世界が戦人を包み込んでいた。
「………」
屋敷に戻ろうとするが、どちらから来たのかわからなかった。
戦人が泣きそうになった時だった。
「…そこに、だれかいるの?」
「っ?!」
茂みを掻き分けながら現われたのは、一人の少女だった。
「貴方は、だぁれ?」
ふわりと笑う少女の顔に見覚えがあった。
「……べあとりーちぇ…」
そういつだったか、金蔵が大事にしていた写真の女にそっくりだった。
「…妾を知ってるの?」
「…っ」
言葉が出てこなくて、戦人はこくこくっと一生懸命に頷いた。
見れば見るほど、あの写真の女にそっくりだった。
金色の髪に、青い瞳、そして、微笑み方、どれもこれもが生き写しだった。
ベアトリーチェに手を引かれ、戦人は彼女が住んでいるという屋敷に招かれた。
「今、紅茶を淹れてあげるね」
にっこりと笑うベアトリーチェに、戦人はこくりと頷く事しかできなかった。
年の頃は、戦人より少し上、勿論写真の女ではない。
『…祖父様の知ってる人かな』
ぼんやりとそう考えながら、戦人はベアトリーチェを見つめた。

結局、金蔵に森の中で出合った彼女が誰なのかは、聞くことが出来なかった。
彼女の事を話すと、魔法が解け二度と会えないのだと、ロノウェにそう言われたからだった。
ロノウェとは、彼女の執事であり、戦人を森から出してくれてた男だった。
「気をつけて、帰るのだぞ」
手を振りながら見送る彼女に、後ろ髪をひかれる思いだったが、戦人は若干胡散臭い執事の後を追った。
その道すがら、彼女の執事に言われたのだ。
「…戦人様、今日のことは誰にも、話してはいけませんよ」
「…え? なんで…祖父様にも?」
「ええ、金蔵様にも、誰にも話してはいけません。誰かに話してしまえば、お嬢様には二度とお会いできません」
二度と会えない。
その言葉に、戦人はぎゅっと手を握り締めた。

それが、彼女を見た最後だった。


そして、これが三度目、右代宮の家を出て帰ってきた6年ぶりの親族会議の日だった。
「………」
壁に飾られた金色の髪に青い瞳、綺麗に微笑む彼女の姿が描かれた肖像画が、戦人を引き寄せた。
「…ベアトリーチェ…ただいま」
微笑む彼女に、戦人は笑みを返した。
話を聞けば、彼女はベアトリーチェ、黄金の魔女ベアトリーチェだと言うらしい。
『魔女? 祖父様は、何考えてベアトを魔女扱いしてんだ?』
どう考えても、あの写真のベアトリーチェではなく、あの日森の中で出会ったベアトリーチェの姿だろうと、戦人は思った。
「…んー…後で祖父様に聞いてみるか…会ってくれっかなぁ」
首を傾げ、戦人は頭を掻いた。


それから、しばらくして、魔女の連続殺人が始まった。


戦人は誰にも話さなかったし、忘れもしなかった。
だから、これは当然なのだ。
「………」
肖像画の中の彼女が、魔女として戦人の前に現われ、残酷に笑う。
それすらも、美しいとそう思った。
子供の時はわからなかったけど、きっと森の中の彼女は、祖父のため、金蔵のためにあそこで育てられていたのだ。
『…そりゃ、どう育つかわかってんだったら、そうするよなぁ…俺でもそうする』
にやりと口端が自然と上がる。
「…何がおかしい?」
「いーや? で、ベアトリーチェ様は、俺にどーして欲しいんだよ?」
そう問えば、彼女は嗤う。
己を魔女と、魔女を認めよと、嗤う。
「………魔女なんていねぇ」
だって、戦人は知っているのだから、彼女が魔女でないことを、だからそんなの認められないと戦人は言う。
「認めぬと言うのか? くっくっく、あぁ、やはりなぁ…ならば、認めさせてやるわっ!!」
彼女が嗤う。
己を認めぬならば、永遠に続くゲームをしようと、愉しそうに嗤う。
『…あぁ、駄目だ。全然、駄目だぜ? ベアト、それじゃ、俺は絶対に、魔女を認めない』

初めて見たあの日に、きっと知ってしまった。
次に出会ったあの日に、無自覚に落ちた。
家を出て6年の間に、ずっと焦がれた。
帰ってきて肖像画を見て、ようやく自覚した。

ベアトリーチェを見つめながら、戦人は思う。
『あぁ、ずっと、彼女に恋をしてたんだ。恋を知り、恋に落ち、恋に溺れ、恋に狂う…いっひっひっひ』
戦人は、ベアトリーチェに宣言する。
「魔女なんていない。俺はそんなの認めない」
だって、彼女は魔女でないのだから、そんなものは絶対に認められなかった。
それにと、戦人は口を歪める。
『それに…祖父様も死んでるし、彼女が俺とゲームをするなら、ずっと俺と一緒だろ? あぁ、本当に、魔女なんて認められねぇなぁ』
そして、戦人は言葉を続けた。
「ベアトリーチェ、俺はお前を絶対に逃がさねぇ…」
恋焦がれた彼女を目に捉え、戦人は満足そうに嗤った。

あぁ、本当に、逃げたとしても、絶対に捕まえて離してなんかやらねぇ…。


――――

本当にありがとうございましたー!
お願いした内容は「金蔵さんに妾として囲われてるベアトと戦人が出会ってドロドロな展開を」みたいな感じでした。はい。ごめんなさい。




あー最近文章書いてないなー(遠い目)
いや、妄想は今日も今日とて元気なんですけど、文にする気力がry
……八城家の病んでる感じのが書きたいです。ネタはあるんです嘘じゃないです(´・ω・`)

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