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桜の花の浮かぶ水槽で

鯖も泳いでます

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忘れ去られたParadox~真里亞のハッピーハロウィン~

“今日は、早く帰るからね”

ああ、この言葉、何回聞いたんだろう。そして自分はまた、信じてしまったんだ。
ねぇ……ママ。真里亞、いい子にするから。だから。『いらない』なんて言わないで。

「私が言うのもなんですけど、ジャックオーランタンってグロテスクですよね」

今日はハロウィン。
ママはお仕事でいないけど、真里亞には魔界のお友達がたくさんいるから、楽しい楽しいハロウィンパーティーなのだ。

「うー、グロテスク? そうかな」

煉獄の七姉妹の長女、ルシファーの呟きに、真里亞は首を捻った。

「いや、だって眼とか刔られてるじゃないですか。……ほんと、私が言うのもなんですけど」
「そうね~私達、刔る為の杭だものね」
「でもぉ、私はこんなカボチャよりニンゲンをエグりたぁい!」
「こら! 真里亞様の前でそんな発言をするなッ」
「はぁい、サタンお姉様」
「申し訳ありません、真里亞様」

キャハハハ、とはしたなく笑いあう妹達の中で、ルシファーは一人本当に申し訳なさ気な顔をしていた。
否、多分、他のみんなも同じように思っているのだろうが、常にポジティブなのが七杭達だ。
感覚的にそれを感じ取った真里亞は、せっかくの楽しい宴に水を挿すまいと、微笑む。

「ううん、真里亞は大丈夫だよ。それにしても、このジャックオーランタンは誰が作ったの?」

真里亞が指を指したそれは、ハロウィンパーティーだから必須だろう、とシエスタ00が持って来たものだった。
だけど、シエスタが作ったなら、……例えハロウィンであろうとも、99%ニンジン製なはずなのだ。だから、違う。
となれば七杭? ううん、今の会話だと、そんな感じじゃない。

「ああ、それはベアトリーチェ様が作ったものです。真里亞卿」

困り顔のルシファーの横から、当の00が答えてくれた。
……ベアトリーチェ? 

そうか、納得がいった。
本当は、今宵のパーティーにベアトリーチェも招いていた。けれど、生憎今日は夏妃伯母さんと親族会議のお疲れ様会? をやると言って、断られてしまったのだ。
そのかわり、来年のハロウィンは真里亞の為に盛大にやると約束してくれて。今年はとっておきのプレゼントをやるから許してくれ、とも。だからきっと、これがそのとっておきなのだ。

「ベアトリーチェ様・・・それなら中身は私にくれればよかったのにぃーッ」

お菓子の山にうもれていたはずの暴食のベルゼが、いつの間にか真里亞の側で、からっぽのカボチャの内側を覗いて悔しそうに言う。

「ああずるい、それなら私だってぇ」

続いて、嫉妬のレヴィアタンも。

「これは御自ら作られたのか……。それなら私が代わりにやって差し上げげたのに」
「それじゃロマンないにぇ」

主さえも――否、だからこそというべきか――標的にする悪魔、怠惰のベルフェゴールと。
それに口をだす、上級武具シエスタ410。

「本当に刔るの好きですね、ベアトリーチェ様」
「ほんと、私達以上よねー……、さくたろもふもふ~ッ」
「そんなこと、言っちゃダメだよ。……! うりゅー!」
「あ、マモン姉裏切り者ッ」

45。マモン。さくたろ。アスモ。

「ワルギリア様の教育は間違ってなかったはず……あ、これ食べるか?」
「(どうでしょう……)あ、ありがとうございます」
「ああ、コラッ真里亞様の分まで食べるなベルゼー!」

00。556。サタン。


真里亞は部屋中を見渡す。おいしいお菓子と、華やかな飾り付けと、賑やかな仲間たち。
とてもとても幸せな、一夜の断片。切り取ったそれは、幸福の証明であるはずなのに。

――――なんで、……だろう? 
真里亞には、こんなにいっぱいのお友達がいるんだよ? なのに、どうしてか、何かが、引っかかる……。
そえは、ベアトリーチェがいないからなのだろうか。それとも、

「……楼座様がいらっしゃらないと、寂しいですか?」
「……ルシファー」

楽しい楽しいハロウィンパーティー。
けれど、主催者の真里亞は、どこか空虚で。それに真っ先に気付いたルシファーに続いて、みんなも真里亞の元へ集う。

「真里亞……僕達じゃダメなの? うりゅー」
「真里亞様、一緒に楽しみましょう」

心配そうに、或いは無念そうに、うつむき、励まそうとする友人たち。

……ごめんね、ごめんね。
でもね、私は、真里亞は、ママにもいてほしかったんだ。
ママと、さくたろと、ベアトリーチェと、七姉妹と、シエスタ姉妹と。ああ、だって二人も欠けてる。
だから、こんなにも、“足りない”って思うんだろう。

「真里亞様・・・・」

真里亞はとても、楽しみにしていた。今宵という日のの宴を。ママにはみんなは見えないけれど、それでもきっと、幸せな夜だったはず。
だけどママは約束を破って、真里亞の隣にいない。ベアトリーチェも、真里亞より伯母さんを選んでしまった。

(さくたろは大事な真里亞の半身。七姉妹とシエスタは大切なお友達で。だけど完璧じゃない、真里亞の世界。真里亞は、わがままなんだ……)

「わがままじゃありませんよ」
「ルシファー?」

ずっと、誰よりも、真里亞本人よりも暗い顔をしていたルシファーが、口を開く。
わがままじゃない? この、限りなく黄金郷に近い世界で、満足できない真里亞は、わがままじゃないの?
ううん、わがままなはず。だから、今彼女が言った慰めは、*****なんだ。

「違います。だってここは、近いだけで完成されてない。……悔しいですけど、真里亞様には楼座様とベアトリーチェ様が必要なんです」
「うー、わがままだよ。だってこんなに真里亞は幸せ」
「なら、笑って下さい……。真里亞様の孤独を埋めるのに、私達は、少しでも役に立ちたいんです」
「そうだよ、真里亞。笑おう?」
「笑って下さい。真里亞様」
「私達には、真里亞様の笑顔が必要なんです」

優しい友人たちは、真里亞の周囲に集う。
真里亞は彼女たちに向かって、ぽつりと呟く。

「……真里亞、必要?」
「はい……!」

――真里亞は、いらなくないの?

「何言ってるんですか。真里亞様は私達の大切な人です」

その言葉を聞いて、真里亞はようやく、本当に幸せそうに、笑った。
今度こそ。楽しい宴を、宴の続きを。

するときらりと、小さな金色の光が舞う。雪のようなそれは、黄金の蝶。澄んだ黒目でその元を辿れば、ベアトリーチェのジャックオーランタンがあった。

『ハロー! ハッピーハロウィーンマリアぁ~★ 』

そこから聞こえてきたのは、今までのしんみりした空気に似合わぬ、なんとも気の抜けた明るい声。
それを聞き、真里亞は弾かれたように親愛なる魔女の名を叫ぶ。

「ベアトリーチェ!」
『いやー行けなくて悪かったのぅ。まあよく考えたら妾、六軒島から出れなかったんだわ。ワリイワリイ。来年は親族会議でやろうな~♪ という訳で、今年は妾、声だけの参加だぜぇ~』
「「「「……ぷ。……あははははっ!」」」」
『ふぇ? な……何だよぅ、みんなして。妾なんかしたかぁ?』

思わず、みんな抱腹絶倒。
何が面白いのか、ベアトリーチェにはよくわからないみたいだけど。

(空気読めないのが、今回ばかりは役に立ちましたね)

なんて、自らの家具に思われているとも知らず。
意味のわからないベアトリーチェは、自分の“とっておき”会話のできるジャックオーランタンが不満だと勘違いし、余計に場を調子付けようとする。

『しかたあるまいな、今宵は特別に、妾が歌を歌ってしんぜよう!』

どうしてそっちへ向かうのか、わからないけれど、……ベアトリーチェ、大好き! 
真里亞は心のなかでそう言ったあと、迷うことなくそれを言霊にした。



片隅で、ルシファーは一人、考えていた。何故片隅かというと、このノリについていけないからである。

(……真里亞様が望んだ一人が声だけとはいえ参加して。……)

それなら、もう一人も。そんな小さな奇跡が、起こってもいいはず。
だって、こんなにも。こんなにも真里亞は。

「真里亞ーただいま~」
「ママ!」

最愛のママの帰宅に、真里亞は歓喜を隠せない、
しかし、その感情が胸をいっぱいに埋め尽くす前に、「どうして? 今日はもっと遅いのではなかったの?」……そんな疑問が真里亞を支配する。

そして気付く。お部屋にお菓子が散乱していることに。
言いつけを守れなかった。せっかく母が早く帰ってきたのに、きっとまた不機嫌にさせてしまう。

「真里亞? 寝ちゃったのかしら。入るわよ。……!」

怒られる! と真里亞は咄嗟に身構える。
けれど、ママが真里亞に与えたのは激しい叱責でも平手でもなく、温もり。それは、柔らかな抱擁だった。

「うー?」
「ごめんなさい……。真里亞はこんなにパーティーがしたかったのに、私は遅れてしまって……」

予想と異なった母の行動に、一瞬狼狽える。
周りを見れば、みんなが微笑んでいた。そうか……これが、真里亞の黄金郷なんだ。

「うー、ママ、真里亞のこといらなくない?」
「・……真里亞! 当たり前じゃない、ママに真里亞は必要よ」
「うー! 真里亞もママいるー! うー」

誰かが言っていた。

“いらない人なんていない。いらないものなんてこの世にない”

ああ、じゃあ“いらない”なんて言葉いらないね。あれ? でもいらない言葉もなくて……?

「真里亞、明日はお休みだし、これからパーティーしましょう。今夜だけよ?」
「うー! するー! ママとさくたろ達とする!」
「えぇそうね、真里亞のお友達と一緒にしましょう」

だけど、そんな矛盾はもう興味ない。だって幸せ。それで十分。

さあ、宴を再開しましょう? ようやく全員揃ったの。
さくたろ、七姉妹、シエスタ姉妹、ベアトリーチェ。そしてママと真里亞!

これが真里亞のハッピーハロウィン☆




忘れ去られたParadox(既に記憶の奥底)

思い出さないほうが幸せ。


End


――――

October.28.2009

真里亞ちゃんかわいいよねって言う。

――――

超蛇足ネタ
ベアトリーチェ側です。

「のぅ・・・妾もう帰っていいかの?」

十月某日に行われた、先の親族会議の反省会中(真里亞にはお疲れ様会って言ったがな!)。
反省会と言っても、メンバーは夏妃、妾、金蔵の三人で、つまるところ『亡霊な金蔵サンのこれから☆』なわけだ。
ああ、ふざけてすまぬ。でも妾もう飽きたんだよぉ。真里亞のハロウィンパーティーいきてぇよ。せめてカボチャごしに喋りてぇ。
屋敷の家具どもとの反省会もあるとか言って延び延びになってたからって、よりによってハロウィンかよ。でも、妾は今夏妃に仕えてるわけだし。反省会も大事だし。

「すみません。ベアトリーチェ。蛇足が長くなりましたね、終わりましょう」
「よっしゃ!イヤッホゥッ! じゃあなっ!」
「待て、ベアトリーチェ」
「あん?何だよ金蔵」
金蔵が、何やら真剣な顔をしている。
「今宵は魔女も亡霊も無条件で存在出来るハロウィン! つまり私が死んでようが関係ない! さあ! 18年の年月を越えて今宵再び抱き合おうではないかベアトリーチェェェーッ」
「ウッゼー!何言ってやがんだこいつぅ?! 頭イッちまったんじゃねぇの!?」
「ハロウィンだぞハロウィン!」
「ハロウィンはそんな日じゃねー! ああっ夏妃が真っ赤になって倒れたッ」
「ふっ夏妃もまだまだだな。いや、これは蔵臼がまだまだというべきか」
「黙れよエロジジイ!」

(リアルに)押し問答を繰り返していると、ワルギリアが入って来る。

「あ……あの(お邪魔だったかしら)」「お師匠様!(いやナイスだ!)」
「邪魔だ」
「え……と」
「とりあえず妾を助けろ!」
「え、ええ」
「は……私に盾突くかワルギリぐぁ……ッ」

金蔵の額に鯖が突き刺さる。

「鯖は正義です☆ さあさお嬢様行きますよ!」
「さすが……(でも☆はなぁ、人のこと言えねえけど)」
「永遠の17歳です」
「あ、アニメ予告の中の人ネタ引きずってんなよ」
無視。
「ところで、今からどちらへ?」
「あ?真里亞のハロウィンパーティー行くんだぜ。健全だろぉ?」
「ベアト……あなた、六軒島に閉じ込められてるの忘れてません?」
「あ・・・!」

きっとこれで翌年儀式やる決意したんだ(違

お粗末様でした。

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